最終話 未来への、意味ある抵抗!

第6章

 

 

 いや、確かに最初はネクサスの影響か勢いそぞろ心地よかったのだが、ものの1分も経たない内に、前方の戦場、拉致された仲間達、ヤフオクの極め付け写りの悪い顔写真、そしてまたもや初代カウンセラーの二の舞かと、なんだかイヤ〜な気分でブルーになる自分を見つけてしまう。

「船長?」 今度は職業らしく、カウンセラーが顔を覗いてくれる− 「大丈夫ですか?」

「ありがとう、カウンセラー」 出来る限り微笑んだ 「ごめん、いろいろと・・・・いかんせん、初代はおめでた− 加えて、なんの因果かおんなじトコ・・・・頼りになるのは、新入り、君だけだ!」

「船長って、カンペキ "集合体" からコケ倒されてますよネ!」 あの神秘的な目を輝かせて 「実は私も別のカウンセラーと勝負して、すっきりしたばかりですよ〜 負けちゃいましたけど!」

笑顔で受けて 「”ペンはフェイザーより強し” か・・・・元気出してくれ!」 ひと呼吸してから 「カウンセラー、私はタカヤナギ博士のいたV社の大のファンだった・・・・あそこが頑張ったからこそ私も宇宙艦隊の活躍の記録を、若い頃沢山学べた・・・・だから君があそこの顔になった時は、どんなに喜んだことか−」 ピカーク、さびしげに 「しかし、”ボーグの女王様” がV社を占領した今、私の想いは露と消えた・・・・V社のテクノロジーは、いまやボーグ・テクノロジーのそれだ・・・・なんで3CCDを出さないのか解らないし、あのW-VHSの様な抜きん出たアイディア達も、もう2度と生まれないやも知れない・・・・」

「・・・・船長・・・・そんな風に思っていてくださったなんて、嬉しいです。」 カウンセラー、今度は強い目で 「きっと船長、ボーグに勝てますよ!」 

なんかちょっぴり元気が・・・・ 「ありがとう、カウンセラー!」 これでこそ、カウンセラー!

「ちなみに・・・・」 ふたつとない笑顔で彼女は 「カスミガセキ星域辺境部の今日の宙気は、太陽風が毎秒100万分の1テラ、イオンアラシの兆候はなく、絶好の戦闘日よりです− 戦闘フォース席より報告イジョウ!」

 やっぱそーくるのネ。

 「あたしが指揮を執ってればよかったかな・・・・」 まるでオルガンを弾く様にコンソロールを扱う、その後ろから独白の声−

マイペースの憎まれっ子だが、ピカークは新保安主任の心根は知っているつもりだった 「君にはスフィアとの戦闘責任があった− 既に指揮官である私が在中していたのだから、君の判断は正しい・・・・酷な様だが、これが上陸保安部員の悲しい伝統なのだ− これからの戦闘に、気持ちを切り替えてくれ。」

彼女はちょっぴりの笑顔で頷く− それでいいんだ!

 「はい! 船長− ご不在時の経過報告と現在の艦の情報報告です。」 新副長、報告ボードを以て。

受け取ったピカーク− やはり保安部員達のことが気に病むのか、はたまた戦闘への戒めか、いつになく引き締まった顔をしている

「・・・・商業主義と全体主義、そしてアコギな競争原理には勝てないのだろうか・・・・お台場スフィア、そんなことより頼むから私の存命中にエンタープライズの最終話まで放送し終わってくれ!」 ぽつりと、今度はピカークが。

「船長、なぜ私が寿退隊するのか解ります?」 新副長は優しく 「人として、人を忘れたくないからです− 無論、宇宙艦隊の仕事も、素晴らしいものですが。」 ピカークの膝に手をあて 「例え今日じゃなくても、船長はいつの日にか、ボーグに勝てますよ− きっと、必ず!」

 ボーグやロミュランいわく、『問題の人間』 であるピカークは、毅然とその膝の手に手をかさねた− これこそがホンモノの本当の真の ”前向き” なのだ! 「ありがとう、副長!!」

 「船長、戦闘宙域に到着!」 元気そうな操舵長から!

「メイン・スクリーンON!」

 きょぇぇぇ! 迫力満点のあの光景!! ドスグリーンの小惑星1個分もあるボーグ・キューブに、数え切れない数の航宙艦が群れを成して光の束を浴びせ掛けている! キューブからもかの緑のビームが散発的に発せられ、その度にこちらでひとつ、あちらでひとつ、火花が散って艦が傷付き倒れて逝く・・・・不謹慎ながらボーグ第2次侵攻の記録をスクリーンでついぞ見れなかったピカークは、物凄い憤激を体中に感じたッ!

「船長、レッド・オクトーバーから通信です!」 自責の念はもう払えたか、新保安主任!

「スクリーンに!」 メインスクリーンはラミウス提督の顔にすげ変わる− おお、指令席のその眩しいお姿! 「提督、遮蔽シャトル、感謝します! 無傷ですよ!」 声をはれるだけピカーク!

「役に立ってよかった! 小僧、とりあえず俺の指揮下に入れ− 第4キューブの担当だ!」

ちょっか、指を立て! 「望むところです!」 続けて 「レッド・オクトーバーにコマンド・プロトコル、ロック!」

提督、口髭を悪戯っぽく 「お前に倣って、理想のメンバーをヘッド・ハントしてきたゾ!」

ピカーク、スクリーン越しに先方のブリッジを眺め、見覚えのあるエイリアン達が集うそのサマに− 「なるほど− 思いつくことは、みんな同じだ!」

口髭は更に戯れ、「ついて来い、小僧!」

ピカーク、また憧れのヒーローに敬礼! 「アイ、サーッ!」

 「第6戦闘モードでプロトコル・ロック− 1/4インパルスにて追撃!」 操舵長の緊張した声が響く!

すぐにボーグ・キューブがスクリーン全面に! 瞬発入れず、グリーンの衝撃が艦体を襲う!! 助かった− 衝撃は、身構えていたほどではなかった!

「対ボーグ・シールド、順調に起動中! 今のところ損害なし!」 保安コンソロールから!

「船長− 船尾シールド位置0488に僅かな周波数偏移を感知 −ナノ・セカンド単位でのズレを発見− 補正しましたが、完璧とは言えません・・・・次の被弾時が懸念されます。」 アトムから

「アトム、それってセンサーの方の衝撃損害みたいよ!」 新保安主任から続けて!

アトム、再び点検を 「はぁ! なるほど、保安主任の仰る通り、センサー側の損害の様です− 補正しました」 新保安主任を向き 「さすがですね!」

ピカークも満面の笑みで彼女に振りかえる −新保安主任は、軽いウィンクで返してきた− 立派になったなぁ!!

「御礼だ− 量子魚雷、戦略データリンク部位に照準− 暫時発射!!」

 今度は返礼の真っ赤なクス玉が立て続けにボーグ・キューブへと!! 破裂して火花が一瞬ドス黒い構造部に散ったが、びくともする様子はない・・・・

「量子魚雷も、殆ど光子魚雷並に排除されるようになったかぁ・・・・」 懸念とも感慨とも取れる台詞が、ピカークの口から。

 ドン! 今度は本格的な衝撃!

 スクリーン前方の2艦が、ものの見事に吹っ飛んだ余波だ!

「取り舵だ− 破片を避けろ!」

「右舷第12区画に連続被弾! フォース・フィールド60%! 見事、持ちこたえますよ!」

「さすが機関長だ・・・・被害がなさすぎて、物足りないカナ。」 僚艦が破壊された手前、ちょっと不謹慎な発言か。

 「船長!」 その新保安主任から 「パワード・スーツの発進命令が下されました− 一端、全艦キューブ半径1万メートルまで退却指示です。」

「了解 −操舵長、一端1/2インパルスで後退− パワード・スーツ部隊のお手並み拝見だ!」

 レッド・オクトーバー含めた第4部隊も全艦後退− やがてパワード・スーツを装着した戦闘部隊が続々とブルーベース級の搭載艦から放たれる!

「アトム、正直なところ、どうなんだ?」 まぁ、ピカークの疑念ももっともだ− 相手は人類の創偶した敵の中でも、最強のそれなのだから!

アトムは忌憚なく 「パワード・スーツが放出するミノフスキー粒子が、ボーグの発する強力なテトリオン放射に破壊される可能性など、危惧される点は幾つか考えられます。パワード・スーツは全てこのミノフスキー理論で構築されており、正直 『んな、アホな!』 とツッコミたい所ですが、『じゃあ、トリノ粒子のタイム・トラベルはなんなんだ!!』 とツッコミ返されると、話はトン・トンです。」 実にわかりやすい解説だ!

ピカークはちょっと唸る− 「う〜ん、とにかく、様子をみまひょ!」

 銀色に光る砂粒が、搭載艦から次々と放たれゆく− しかしキューブが無論、容赦するわけではない・・・・到達する前にこれもまた、ハエや蚊のように払いのけられている・・・・

「我々第4キューブ担当の搭載艦は2機・・・・合わせて200体ほどのパワード・スーツが投入!」 ピピ! 通信のようだ 「船長、ラミウス提督から!」

「小僧! 聞こえるか?」 音声のみで

「はい、よく聞こえます、提督!」 ピカーク、身をのり出す

「すまんが、ダメージの少ない艦で、奴らを援護してやった方がよさそうだ・・・・」

「しかし、作戦では彼らに被弾する可能性があり、加えて我々も 『チャイコフスキー』 の影響が否めないとやらで・・・・」

「ミノフスキーだろ!」 鼻を鳴らしている所をみると、提督も気にくわんらしい 「じゃぁ、あのテイたらくはなんだ? とにかく、俺も向かうから援護しろ!」

しょうがないな 「了解! 援護します!」

 先ずはレッド・オクトーバーが先陣を切って突っ込む! ハーレムと他数艦があとを追った! 部隊はパワード・スーツ部隊の邪魔にならぬようコースを定め、一直線にキューブに向かい、ボーグ・プラスター砲を狙って光子魚雷とフェイザーを集中砲火! 一端先方の攻撃は弱まるかに見えたが、なんのその、全く歯が立たない・・・・

 「パワード・スーツ部隊には一時停止を命じた! 全艦、一斉に量子魚雷をありったけお見舞いしろ!」

ラミウス提督の命令一下、突撃部隊から量子魚雷の嵐がすさぶ!

さすがにこれは効いた! キューブのシールドは弱まり、攻撃が一瞬やんだ・・・・

「今だ! 行けッ!」

一時停止していたパワード・スーツのスラスターに再び火が灯り、見事、機動部隊はキューブ着面成功!!

 「やったぁ!」 ピカーク、指令席で膝を打つ!

 着面したパワード・スーツ部隊は早速あたり構わず破壊、加えて秘密兵器である例の 「ミノフスキー粒子」 を散布し始めた、キューブ表面では散発的に火柱があがる− 攻撃もあれ以来、ぴたりと停止したままだ・・・・

 様子をモニターしていたアトムから 「現在、キューブ表面の28パーセントの自己再生機能が停止しました− ミノフスキー粒子は予想を越えて機能しているようです・・・・ん? 待ってください・・・・」 アトムの顔色が変わる 「不味い! ボーグキューブよりお返しにバイオ・プローブが散布されています!」

 「バイオ・プローブ?」 懸念はピカークも同じ!

「この数値から鑑みるに、センチ単位の細胞膜で覆われた "迎合" 用プローブです・・・・ミノフスキー粒子に対抗して、ボーグシステムがすぐに抗体を発生させたようです− 素晴らしい!」

「感心してる場合じゃないぞ、アトム!」

ピカークの言によるまでもなく、バイオプローブを食らったパワードスーツは、次から次へと離散、反対にこっちを攻撃して来た!

「こちらパワード・スーツ第4部隊! コントロールが効かない! 自爆シークエンスを作動させる− 効果ないスーツは構わん、破壊してくれッ!」

 あちゃ〜! だから言わんこっちゃない!

 突然、艦にブレーキが! ひっくりかえりそうにピカーク− ほんと、シートベルトが欲しい!

「どうした!」

「左舷ワープナセル後方から、パワード・スーツがミノフスキー粒子を放射− ハーフ・インパルスに減速! フォース・フィールド40パーセント!」

ピカーク、肘掛をぶったたく! 「機関長! M粒子には持ちこたえられるのか!?」

機関長から 「だいじょーぶ! こっちにはフクシマ=タカチホ式:ハード・フィルター・フィールドが張られているから、いかがわしいものは、オヨビでないわよ!」

アトムから再び 「仰るとおりです・・・・フォース・フィールド100パーセント復旧!」

「パワード・スーツ内の乗員は、転送収容できないか?」

「既にスーツ内、気温60度− 生存しているか、それとも・・・・」

 またもや衝撃!

気が晴れないアトムを見るのはしのびない・・・・ 「・・・・2体とも、自爆しました・・・・」

「・・・・見事な最期だ・・・・」 が、言葉もなく− とは言っていられない! 「直ぐにありったけの量子魚雷をかまして、撤退だ!」

 命令を待つまでもなく、斬り込み隊は置き土産をお見舞いして、その場をさらんと・・・・

 所が、最後尾のU.S.S.ブルータスの様子が・・・・

「ブルータスがパワード・スーツから感染し、 "迎合" されちまったようだ− 艦長から破壊要請が来ている− 自爆できんらしい!」 ラミウス提督の慙愧に耐えない声・・・・ 「転送もダメだ・・・・やむをえん− 破壊しろ!」

ピカーク、歯を食いしばり− 「残念だが− ブルータスに光子魚雷発射!」

 ブルータスは、一瞬の内にあえなく果てた・・・・他のパワード・スーツも、僚艦の攻撃を受け果てるか、はたまた自害の道を選んだ・・・・

 くそーっ! ボーグめっっ!!!! ピカークの胸に、ボーグへの怒りの炎が!!

 そしてその憎っくき化け物は、量子魚雷で破壊された半面を残し、再び息を吹き返す!

「キューブのシールドが全面再生− 間もなく攻撃可能となります!」 アトムも怒りをあらわに!

「他のキューブでのパワード・スーツも同様の末路だったみたい・・・・報告が入っているわ・・・・」 沈痛な新保安主任から。

 新副長から指令− 「全艦、徹底的にバイオ・プローブの探知をおこなって!」

ピカーク、笑顔で 「忘れるとこだった・・・・フォロー、ありがと!」

新副長もまた、戦下の一服 「いえいえ、どう致しまして!」

 しかしなぁ・・・・万策尽きたか・・・・

 「船長、実は内密に開発してきた対ボーグ新兵器の実地テストをご許可願いたいのですが・・・・」 徐にアトムが。

ピカークは眉をレイズし、 「それ、なんなんだ?」

「”スカラー波動砲” です。これは位相共鳴波をスカラッドに次元重畳化させ、各ボーグシステムを貫通し、キューブ中核の 『女王様の部屋』 を狙い打ちにすると言う最終兵器なのです。」

「"スカラー波"?? "ミノフスキー波" の親戚か????」 ピカーク、正直、困惑。

そこでアトムは得々と 「通常のミンコフスキー・エリアからの観測ではなく、波弦それぞれの相対質点各所における観測をさらに次元積分展開したエネルギー波の名称です。通常空間では実態のない質点として観測されますが、一種超局所ブラックホール爆弾と考えて頂ければ妥当かと思います。無論、存在自体の形態が相似するに過ぎず、重力波異常や次元断裂に及ぶエネルギー実態は観測されませんが。」 アトムは首をややかしげ 「その発射プロセスが観測不能な為、通称 『"裸の女王様"兵器』 と呼ばれています。」

「はぁ〜」 ピカークくん、げっそりタメ息 「それって、質点なの? 特異点なの?」

アトムくん、 「”特異質点” ではないでしょうか?」

でもって、ピカークくん、 「聞くだけヤボだった! ただ、どのキューブに女王様がいるか、解らんぞ?」

「キューブは全て 『女王の部屋』 がセントラル・コンプレックスとして仕切られています− 存在するしないどちらにせよ、弱点には変わりありません」 いつになく熱っぽく進言するアトム! 「船長、艦隊には実験観測が不可能な為に承諾を得られませんでしたが、この際是非、試させてください!」

 ピカークは新副長を伺う− 彼女はなにか、嬉しそうに微笑みを返して来ただけだった。

それならば! ピカークはその熱意に負ける決心を! 「しょーがない! 実験を私の一存で許可しよう− パワード・スーツがあの様子じゃ、作戦本部も文句は言えまい!」 新保安主任に 「一応、ホロタイプでラミウス提督に打電してくれ− 一番安全だろう!」 再びアトムに 「で、準備はすぐにできるのか?」

「一応機関長に、状況を−」 アトムは胸をたたく! 「アトムより機関長、例のスカラー波動砲は現状で使用可能ですか?」

 機関長から返信 「ディフレクターからスカラー波を直接射出するように改造してあるわ− そっちのコンソロールから、アクセス可能よ! 但し、あとにも先にも一発だけ− エネルギーではなく、ディフレクターや艦自体への影響から。」 ありま、いつの間に??

「了解!」 アトムはコンソロールとの格闘開始! 「僚艦に撤退指令を願います!」

「近隣艦に撤退指令をやはりホロタイプ打電!」 聞こえないように 「みんな、信じてくれるやら・・・・」

 もう一度副長をみやり 「本当に意見ナシ?」

「アトムがやりたいと言うのなら・・・・私は親友として、彼女を信じます。」 憎らしいほど輝く瞳で!

 「第4キューブよりの撤退完了− 何機かのパワード・スーツがキューブ近隣で尚も自爆しています・・・・」 新保安主任からは、さすがに殊勝に。

「・・・・いたましい・・・・」 指令席からピカーク、そっと哀悼の意を− さぁ、気持ちを切り替えて! 「よぉし、アトム、いつでもいいぞ!」

「ディフレクター・グリット作動準備良し− フェイズエネルギー、次元重畳化・・・・40%・・・・」 艦に唸りが走る! 「・・・・60%・・・・80%・・・・ミンコフスキー特異化完了− 発射10秒前・・・・シールド・マトリックス異常なし・・・・」

 艦体のワサ付きが頂点に!

「−スカラー波動砲、発射ッ!」

 その威勢のいい掛け声とはウラハラに、ディフレクターは一瞬燦然と輝いた途端、一気に勢いを失った・・・・艦内の照明も、こころなしか暗閑だ。−

 「ブリッジより機関室! 様子はどうだ?」

機関長から再び 「全エネルギー出力が40%にまで食い込んだけど、だいじょーぶ! 予想通りだわ! 間もなく出力復旧!」

 その声と共に、照明が元の明るさに−

「ほらね、言ったでしょ!」 機関長の得々とした勝どきが 「今のところ損害0よ!」

「ただ、加害の方も0らしいぞ・・・・」 ピカークの言通り、スクリーンのボーグキューブは、カスリ傷一つない 「アトム、残念だったな・・・・」

「いえ、船長」 アトムはなぜか自信有り気だ 「そうとは言い切れません!」

 その言葉を待っていたかの様に、キューブから散発的な火花が飛び散り、やがてそれらが集まって、コロナの様な火柱に成長した! 凄い! 中心付近から猛炎だ!

「アトム−」 指令席から愛を込めて 「誕生年、かなり遅ればせながらおめでとう!」 だが、ちょっとヤバそうだ− 「おっと、シールド全開! ワープで退避だ!」

 強烈なエネルギーが暴れまくり、あの十数キロものボーグ・キューブが、火山噴火なぞマッチの火にしか思えぬほどの大爆発を遂げる!! まずい− すさまじいエネルギー波が艦体を襲いつつある!

アトム、勢い付いて 「船長! 脱出するスフィアを一機発見! 第6惑星方向へ逃走中!」

「よぉーし、スフィアを追え! ワープ2、発進!」 ピカーク、負けてはおれぬ!

「船長、第6惑星は− 確か?」 新副長の危惧の声。

肘掛に手をそえながら 「ああ、カスミガセキ星系の中心惑星で、正規の連邦加盟星だ。惑星核にプラズマ融合装置を配し、地熱で太陽からの距離のハンディを克服している−」 言葉が一瞬詰まる 「そうか・・・・衛星の数その他考えれば、ネクサスに匹敵する火薬庫になる可能性があるぞ!」

「ボーグ・スフィア、次元転送で第6惑星軌道に到着− 首都近辺を攻撃中!」 保安コンソロールから 「船長、第6惑星の首相官邸より緊急通信です!」

「スクリーンに!」

 そこには、ヌーボーとした疲れ切ったイヌ顔のヒューマノイドの男の姿が 「こちらは惑星ストレンジャーの首相だ! 宇宙艦隊へ緊急通信 −我々はボーグの攻撃を受けている− 首都は壊滅的な打撃・・・・上陸侵攻の可能性も否定できない! 安全保障条約に基き、宇宙艦隊の出動を正式に要請する!」

通信に見やったピカークは、新保安主任に 「他の艦は?」

「現在他2艦があとから追尾して来ていますが、一番早く到着するのはハーレムよ。それからレッド・オクトーバーは損害を受け、現在通信不能・・・・待って頂戴・・・・」 彼女の顔が輝いた 「旗艦シックス・ミリオンから通信− オースティン総合参謀!」

「スクリーン、チェンジ!」

 スクリーンが切り替わり、オースティン提督 −天井から火花が、そしてクルーが慌てふためく様が見て取れる− 提督自身も負傷しているようだ 「ジャム! 第6惑星からの救助要請通信を見た− ラミウス提督と通信不能なので、君が自ら上陸して惑星のプラズマ融合装置を死守しろ! いいか −外交上これが必須だ− 副長の異議は認められない!」 そしてふっと優しい笑顔で 「すまんな、ジャム・・・・こっちは苦戦中だ− 君達が頼りだ。健闘を祈るぞ!」

 「提督! こちらからスカラー波動砲の技術仕様を・・・・」

だが、提督との通信はそこで砂嵐となり、再び第6惑星ストレンジャーの首相が 「・・・・宇宙艦隊へ! 聞えているのか?」

「聞えています、総理!」 ピカーク、席を立って 「U.S.S.ハーレムのピカークです− 今、そちらにお伺いします! くれぐれもお気を付けください!」

有視通信がかなってか、安堵した首相の顔が 「ああ、宇宙艦隊か! 感動した! 我々はボーグに徹底抵抗する! 決して屈しはしない!」

「ボーグとは、出来る限り接近戦を取らないよう努めてください!」 ピカーク、通信を切るように仕草を。

「船長!!」 新副長からだ− 思った通りだが 「幾ら総合参謀直々のご命令とは言え、無謀過ぎます! 上陸するなんて、危険です!」

「わかってるさ・・・・だが、提督直々のご沙汰だ・・・・逆らえまい」 ピカーク、今度の任務に限っては、なぜか終始勇猛果敢− きっと復讐のなせる業なのだろう 「副長、あとは頼んだぞ・・・・」

「惑星軌道に到着! スフィアは首都に攻撃中 −転送ビームの痕跡感知− 既に上陸した模様!」

「量子魚雷、お見舞いだ!」 ピカーク、いきまく!

保安ブースから 「船長、量子魚雷はもう残機なし! それに、軌道上でつかっちゃまずいでしょ!」

新副長に目をむいて見せ、「それでは、ありったけの光子魚雷とフェイザーで攻撃だ!」

光の玉と帯がスフィア目掛けて列を成したその途端、ふっとあの不気味な鋼鉄球は姿をくらました・・・・

「また次元転送のよう− 遮蔽されたわ」 新保安主任のやりきれない顔。

 「さてとそれでは・・・・上陸班編成だ−」 ピカークは肘掛のスイッチに 「ブリッジより医療室へ!」

「はい、あたし!」 ドクターのいなせな声が

「ドクター、済まんが防護措置の為に、いっしょに上陸してくれないか?」

「解った! 準備する!」 はりきってくれている様だ− 正直、あまり頼みたくない仕事なのだが・・・・

「船長! 繰り返しますが、私は絶対に反対です! もし船長が拉致されたら・・・・艦隊の志気にかかわる問題です!」 新副長は俄然いきまく!

笑顔で 「なあに、ホロドクターの技術で安全は立証済みだ− 無事にかえれるさ。それにこれは直接命令なんだ− 君には、援軍とスフィア退治の重要な任務があるじゃないか・・・・」

新副長は唇を噛みしめている− その実ピカークは、その気持ちに感謝で一杯に。

 ターボリフトのドアが開いた−

 あれ? 呼んだのは、ドクターひとりのハズだが・・・・ホロ・ドクター付きだ!

「ピカークくん!」 ホロ・ドクターはドクターを差し置いて前へと 「彼女を行かせるのは、私は絶対反対だ!」

いずこも同じか! 「ホロ・ドクター、お気持ちはありがたいですし、私もそう思うのですが・・・・」

ピカークは一瞬自分の心に問うてみた −確かにホロ・ドクターはシステム的にお世辞にも安定的とは言えない −ゆえに上陸班に加える訳にはいかん− しかし、本当にそれが理由か? 本当は、ドクターに傍にいて欲しいからではないのか・・・・?

 突然、ドクターがホロ・ドクターのホロ・エミッターを剥ぎ取った! ホロ・ドクターは壊れたテレバイザーの様に見事に消失!

「一辺、やって見たかったんダ!」 肩をすくめてドクター 「なーんも支障ナシ! 医療措置の必要性から、ご一緒します!」

 ピカークも、マネして肩を竦めて見せる!

「船長・・・・」 新副長が改めて 「くどいようですが・・・・どうしても・・・・私はどうしても承服しかねます・・・・」

ピカークは新副長をみやり、 「私の分も、楽しく幸せな人生を送って欲しい −勝利は死と生の均衡にある− 決して闘いを焦るな。」

 言葉なく、新副長は涙を浮かべた・・・・ピカークは、彼女に感謝・感謝だ− 恨みこそすれ、人に感謝できるなんて、そうメッタにないことだから!

続けて、新保安主任に− 「じくじたる、なら、一緒に来るかい?」

「モチロン!」 意気揚揚と新保安主任!

「それではっと・・・・」 ちょっぴりニコっとピカーク 「最後の人事権を行使する −操舵長、保安ブースを頼む− 副長の補佐だ。それと・・・・カウンセラー!」 びくっとした彼女を伺い、楽しそうに 「操舵席を頼む!」

「船長! 無謀ですッ!」 カウンセラー、目をくりくりさせて!

「ラストの恒例さ− アトムに一部手伝ってもらうといい!」 楽しいけど、ほんとにいいかナ。

 そして彼は指令席に深々腰をかけ直した・・・・今度と言うこんどこそ、最後だろう− 間違いなく。彼は若干なごりを以って席を離れ、手を肘掛に。他人から見ればほんの一瞬、しかしピカークにはなんともいとおしい、自己実現の場との別れだった。無理な形式的なそれではなく、心よりの自然な感謝の気持ちだ− ありがとうブリッジ、そして指令席!

「行こう!」 想いを払い、「副長、ハーレムを頼む!」

「解りました− 船長!」 新副長は静かに 「必ずお戻りに!」

ドクターがそんな新副長に、軽く医療用トライコーダーとホロ・エミッターをジャグリングしてから、ホロ・エミッターの方を投げてウィンク! 「適当に再起動しといて!」

見事にキャッチ! 「はい、ドクター!」 そんな新副長は、新保安主任には自ら 「船長達のこと、頼んだわね!」

「お任せあれ!」 にこやかに、新保安主任がリフトに続く!

「ちょっと待ってください! せめて転送室までお見送りを!」 操舵席につきかけたカウンセラーが、慌ててリフトに駆け乗った!

 4人を従えたピカーク、一瞬、リフトより踏み出す− 「副長!」

新副長は目をはらしたまま、口元を緩め、指を立てた− 「船長! 『帰るまでに直しとけよ!』 は、絶対ナシですよ!」

まるで子供の様な抜群の笑顔を見せたピカークは、ターボリフトに足を戻した。

 その笑顔と共にドアは閉じる− こころなしか、いつもよりゆっくりと。

 

 

 第6転送室は、20名は一挙に転送できる貨物用転送室に継ぐものだ。ピカークら4人は、なんぞ明るく語らいながら扉をくぐって到着した。そこには、またもや数十人の保安部隊と、コンソロールに転送主任。そして機関長が、報告ボードを持って駆け付けていた。

 彼女はピカークを見付け、ボードを渡す 「被害報告と修理報告よ!」

「俺にはもう必要あるまい− ブリッジの方へ・・・・」 ややあって悟り 「そうか・・・・わざわざ、ありがと!」

「何言ってんの! 貴方じゃないわよ!」 ゆっくりと新保安主任に 「気付けて!」 軽くハグすると今度はドクターに・・・・2人は手を取り合って見詰め合うと、優しく抱き合った 「必ず帰ってきて!」

 その様子を、ピカークは見ぬふりしてじっくり見ていた− コンソロールに向かいながら。そこには、なぜか数名の士官がいたが、例のヴァルカン人士官がいない。で、もうちゃっかりカウンセラーが転送主任のワキに。

とりつくろって、カウンセラー 「あー、あたし一応、このコの保護者なんで!」

「なるほど・・・・」 あるひとりの女性士官に目をやり、「ああ、君んとこの管理人さんには凄く世話になった− よろしく言っといてくれ!」 で、もって 「あのトゥボック似のヴァルカン人のコは?」

「あー、寿退隊しちゃいましたぁ!」 あっけらかんとした笑顔で転送主任!

「そーか、ずいぶんはやいなぁ。いいひと見つかってよかった!」 ピカーク、ザンネンそう。

 「あ! せんぱい! せんぱい!」 突如転送主任が、コンソロールを抜け出して新保安主任に駆け寄る 「レプトン・コンバート・アルファ22マトリックス制御トランジットが故障したときの発生音て、どんなでしたっけ?」

振りかえりザマ、新保安主任は転送主任の目をジーット見詰め、「こうよ− ジーーーーーーー!」

アホらしいくらい真剣な眼差しで 「ジーーーーーー! ですね! ありがとうございました! それなら違いま〜す! 良かった(^o^)v」

 ピカーク、例によって機関長にこそっと 「大丈夫なんだろうな?」

例によって 「あれは、単なる第2量子シンクロ制御弁の唸りにしか過ぎないわ− お先に点検しといたから、ご安心あれ!」

ふう! ピカーク、ニヤニヤと、「では安堵して参りますかな!」 本当に楽しい仲間達だ− もう二度と、会えないかも知れないが・・・・

でも再度、機関長より忠告が 「但し、官邸近辺に転送ビームの痕跡があった− テトリオン放射こそ感知できないけど、シールドしている可能性も否めない。」

「解った− ありがと!」 みんなに向かって 「座標は首相官邸第3執務室! 量子マシンガンの安全装置をOFF− 行くぞ!」

 先に保安部隊が転送台にまい進! 最後にドクター、新保安主任− そしてピカークが!

左右に2人を従え、「なんだか、こうして2人に挟まれてると、 "コイヤスの若旦那" の気分だナ!」

「ジャム!」 あらら、またドクターに怒られる!

めげたふりして 「それでは、筋を通してクビになった水戸黄門の心境と言うことで− 助さん、格さん、まいろうかのう!」

 そんなご労乞一行のひと時の輝きが機関長の瞳に映り、帰えらぬやも知れぬ旅へと集う姿を焼き付ける・・・・

"みんな、絶対無事に!"

 機関長のそんな祈りは、果たして天に通じるのだろうか・・・・

 

 

 ぞろぞろと数十人で実体化するのは、なかなかの迫力がある。全員、一斉に量子マシンガンを構える− ちょっと絡み合った。

 新保安主任、早速のトライコーダーで 「ぎゃ〜! シールド表示だらけ!」

ピカーク 「つーことは?」

「ギンギンに張ったドローンのシールドの反応が出過ぎてて、場所が特定できないのよ!」

 その部屋は謁見用の広間って感じ。だが、出迎えはない。

「貰ったデーターからして・・・・」 そのままトライコーダーと新保安主任 「このドアを出た右から三つ目の部屋!」

勢いピカーク、ドクターをも見やり、「よし、行こう!」

途端突進し、ドアに激突!! オデコなでながら、「自動じゃなかったのネ・・・・」

全員、そんなピカークほっといて、いざ進軍!

 外の廊下は、何か嵐の前の静けさを感じるそれで・・・・ええっと、3つめね。

 今度はピカーク、ドアをきちんとノックして、ガチャ!

 部屋はなぜか暗い・・・・その中央には数名の人影が・・・・

「首相! 失礼します! 宇宙艦隊のピカークです・・・・近隣にボーグの反応がありまして・・・・」

 突如、その数人の人影がふりかえる! 極め付け眩しいライトがこちらに押し寄せた!

 げげ、全員ドローン! 中心の影が椅子から立ってこちらを向いた −まごうことなく、さっきスクリーンで見た首相− ああ! その額にはインプラントが!!

 「抵抗は無意味だ!」

 やられた!!

 一瞬の間もなく、上陸班とボーグ軍団に光の応酬が始まった!!

一端一行は執務室から引く− ピカークは通信機を叩いた 「ピカークよりハーレム! 首相がボーグに "迎合" された! 官邸はボーグだらけだ!」 あれ、通じてないぞ!

「官邸自体がシールドで覆われちゃったわ!」 新保安主任も焦り気味

「どうする気?」 ドクターもマシンガンを再び手に。

「とりあえず、さっきの部屋まで撤退だ!」

 だが、既に廊下にはドローンが差し迫っていた! とにかく、ドカドカにマシンガンを打ちまくる! それでもああ、ひとり、ふたり、撃たれては倒れる! ようやっと引っ張り込んで、第3執務室まで無事撤退!

 「なんか策はあるの?」 その怪我人を治療しながら、ドクター。

「とりあえずみんなでそこらのものをかき集めて、バリケードを作ろう!」 ドアをフェイザーを焼き付けながらピカーク 「こんなペラ壁一枚、どうせすぐに破られる!」

「なーんか表示がモヤモヤしているのは、こっちの壁・・・・こっち側にね!」 新保安主任、量子マシンガンかかえながらのトライコーダーって、かなりやりにくそう。

 うわっ! もう既に壁がやけ焦げ始めている!

 うんせ! うんせ! 必死に机やら椅子やら書棚やら、壁から2,3メートルの所にばら撒いた− 全員、マシンガン構えてにわかバリケードから顔を出す!!

 来た! 壁が唸り爆発!! 同時にレーザー・プラスターが燦々とふりそそぐ!

問答無用!! 量子マシンガンが一斉に火を吐き、先頭のドローン数体を先ずは撃破ッ!! しかし・・・・高熱が上陸班一行を襲う− 不味い、近すぎた・・・・しかし、第二陣の攻撃隊は5,6メートル先であった為、かろうじて被害を免れた。

「ドクター! 影響はなかったか?」 ようやっと、怒鳴りかける余裕が!

「被爆しちゃったのは、残念ながら確実ね! でもこの際、そんな事言ってられないわ!」 ドクターもトライコーダーを片手に!

「なんとか押し出そう! ここにいては 『飛んで火にいる』 だ!」

「船長! トライコーダーを調整したわ! この建物、数百体のボーグに囲まれてる− 脱出は不可能よ!」 眉間ににらめっこで、新保安主任

「貸してくれ!」 ピカークは彼女からトライコーダーを 「これならば・・・・この先の階段から屋上に抜けられる− マシンガンで頭上のシールドを破壊して助けを呼ぼう! 先ずは階段までの道か・・・・」

「作ろうったって・・・・いずれにせよ、これじゃぁ接近戦よ! 確保する前に共倒れだわ!」 今までに、新保安主任はこんな真摯な姿を見せたことはない・・・・

 そう言っている間にちょっとばかり、敵は後退した− いいぞ! チャンスだ!

 ピカーク、5年前の最初の任務でQに貰ったザックから、なにやら取り出して・・・・

「ドクター、禁じ手だが、この際これを使うしかない!」

 ポーンと彼女に投げたそれは、なんと! フェイザー・サーベルだっ!!

「どーやら。道を開けるには、それしかないようだね!」 ふふ、ドクターも乗り気のようだ!

「ナノ・セカンドでボーグ・シールドの周波数変調を読んで、更に位相変調するように仕組んである−」 ニヤリ! 「『新・必殺仕置人:現代編』 を撮って以来10年ぶりだ・・・・腕がさび付いてなきゃいいが!」

「そのなまぐさじゃぁ、どんなもんかねぇ!」 ドクター、ちょぃと腕をたくしあげる!

「保安主任− 援護を頼むぞ! あと、せめてもの罪滅ぼしに、BGMだけはウィリアムズにするな!」 顧みて 「ドクター、ちゃんと腰入れろよ!」

「ウルサイわね! そっちこそ、ぶっ倒れるんじゃないよ!」 おお、待ってました、そのタンカ!

 ふたりは機を見てパッと飛び出すと、先ずはフェイザー・サーベルの位相変調シールドを拡散させて、盾を作った! 後ろからの援護射撃もあり、瞬く間に近接するドローンのラインに到達! 光をサーべルに戻して、バッタバッタと斬り倒し始めた! なんと言う爽快感! 接近戦ではパワーとシールドが武器で動きは鈍なボーグは、その比較的ナマグサのピカークにでさえ、ものの見事に粉砕する事ができた! うーん、ドクターの華麗な剣さばきは、言うまでもなし! シールドとのスパークが奏でる輝きに、彼女の目も輝く− この企画、おー当たり!!

 ものの数分と経たぬ内に、階段までの道は空いた− だがこれから問題だ・・・・

 お互い背中をあてがって辺りを伺うピカークとドクター 「結構、やるじゃないの!」

ピカーク、不敵に 「殺陣の稽古は、お前さんより先だよ− 負けねぇぞ!」

そこへ新保安主任が駆け付け、更に背中をあて三角形を形作る 「こんなとこでライバルってても、仕方ないでしょ!」

「これから階段− あのスペースじゃ、囲まれたら終わりだよ!」 ドクターは、全く息切れしていない

「確か屋上まではあと2階あるはずだ・・・・俺とドクターで先ずは先頭で蹴散らすから、あとのみんなは援護しながら、一気に登れ!」 ピカークは、ぜーぜー

「本気? 心中はご免だよ! 地上に出た方がいいんじゃないの?」 ドクターにも一理。

「いいえドクター、地上はここより一杯だし、どっちにしろこっちがここを占拠して救出を待つべきだと思う。連絡がないから、シャトルくらい出してくれてるわ、きっと!」 ピカークの弁護なんて、これまた初めて!

「御意!」 ピカーク、賛意 「それじゃぁ、一気にいくぞ・・・・いいか、ドクター?」

「しょーがないねぇ −あいよ− わかったよ!」 なーんか、スゴイゾ!

 ん! 後方からも攻め入って来た・・・・この階はもうヤバイ!

 「今だ!」

階段わきに構えていた3人は、様子見ののち、次の階へ一気に駈けあがる! おお、途中にドローンが! 瞬く間に剣が舞った!

「保安主任、先陣切って屋上へ行け! 数名援護用に残してくれれば、俺とドクターでこの階はなんとかする! 下からこつかれたんじゃぁ、たまらんからな!」

「了解!− 2人ともご無事で!」 新保安主任は数名の保安部員を残して、一気に上へ!

 その間にも、ピカークとドクター、斬って斬って斬りまくり! 気付くと、援護の保安部員ともはぐれていた− そんな中、数体の残存ドローンが固まってドクターを襲う− 3体目までは剣が間にあったが、4体目が間に合わず! 腕をくじかれたドクターは勢いひっくりかえり、そこへドローンの文字通り魔の手が・・・・

 寸での所で止まった− 後ろからピカークが突き刺していたのだ!

 ドローンはドクターの直ぐ脇に、ドン! と屍骸をさらす− ピカークもまた、その場にへたり込んだ・・・・

「・・・・そいつで、とりあえずは最後だ・・・・はぁ・・・・はぁ・・・・」 息せき切って、言葉にならない・・・・

「・・・・ありがとう・・・・ジャム・・・・」 さすがに、ドクターも

ピカークは薄笑い 「なぁに、いっつも助けてもらってばかりだからサ・・・・」

 ふたり、互いをみやる− もっともピカークが、直ぐに視線を外した。

「思えばこの5年、ドクターには迷惑もかけ、世話にもなった・・・・だがこの航海の最後に、君の夢がかなって何よりだ・・・・応援した甲斐あって、私も嬉しい・・・・」 その目は、郷愁へと向いているのだろうか −ふとピカークは、アカデミー時代の無垢だったドクターの姿を思い出す− キャンパスで遭う度に、声さえかけられなかったあの日々・・・・

「もし、君がいつかボーグ・キューブに攻め入った時、私に似たドローンが死んだような顔をして黙々と働く姿を目にしたら、躊躇なく君の手で殺してくれ・・・・」

いきなり、ドクターはピカークの肩をつかむ− 「あなたはならない! ボーグなんかには、絶対にならないッ!」 ドクターの目は力強く、そして間違いなく潤んでくれていた・・・・なんと有難いことか・・・・

 ところが− その麗しい目は、次の瞬間、驚愕のそれに! 「ジャムッ!」

 何事かと、ゆっくりとふり向くとそこには・・・・!?

 ドローンだ! しかも決して忘れられないあの顔−

 あの、あの、拉致された保安部員の娘ッッ!!

余りの事態に、ピカークは腰が抜けそうになった −近すぎたのだ− 疲労もあった。ドクターと共に中腰であとずさりするのみ・・・・ああ、サーベルはどこだ!

「・・・・ワレワレハ "ボーグ" ダ・・・・テイコウハ、ムイミダ・・・・・」 彼女はあの可愛らしかった目を世にも醜いレーザーのそれに奪われ、ピカークを凝視する− なんて・・・・なんてことだ!!

 そのドローンの手が、ピカークの元へと−

「ドクターッ! 危ないッ!」

ピカークはありったけの力を任せ、ドクターをまたも突き飛ばす!!

「ジャム!!」 悲痛な叫びが、無人の廊下に木霊する−

 半身をドローンにつかまれ、ピカークは一瞬の内にその場から消え去った・・・・

 カラン、と音がして、フェイザーライフルがその場に転がる− そして、つかみかけていた同じそれも、ドクターのその手からも。

 「・・・・医療主任より保安主任へ・・・・」 胸の通信機をぐっと握ったドクターの瞳からは、涙が容赦なく零れ輝く− 「・・・・ジャムが・・・・ジャムが・・・・ボーグに拉致された・・・・」

 

 

 

 

第6章 終

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