スタートレック・ハーレム:第6話時・キャスト


 ジャム・トムキャット・ピカーク提督; U.S.S.ハーレムの元"船長"。25年前17の時、親友達の裏切りをきっかけに失意の中希望を胸に宇宙艦隊に入隊。直後かのミスター・スポックと出会い一生を艦隊稼業に勤める事を決意するが、一時は社会科学者としてアカデミーに残る道を心無い教授によって妨げられてもいる。また、初めて指揮したU.S.S.トーキョーを破壊させしてしまったと言う苦い過去も持つ。第4話のボーグ戦を最後に一旦提督に昇進、アカデミー教官として地上勤務に就いたが、"ボーズ事件"でドクター救出のためにハーレムをジャック、いわばお尋ね者となる。ドジでノロマでホゲなのだが、何故かその悪運で難事件を切り抜け、今日に至る。とーぜんながら、オンナには全くモテない -つーか、そもそもオンナ運などと言うものが全くないことが"1000人のアテツケ"で証明された!

 美くし過ぎる副長; (注:くれぐれもキャスティングはこっちが先やからな!) ロッテンベリー卿の棺を追った艦隊の実験艦U.S.S.ブラックの副長。噂には性格わるいって言われているが、なーにこんな可愛くて綺麗なんならしょーがねーわな! ピカーク等と共に異次元に消えた棺の謎を追う- 果たして本当に棺は戻るのか、そしてブラックの目的とは!?

 ドクター; ピカークの親友の未亡人と言う設定はちょっと嘘臭いが、ともあれ昔馴染みと言うよりか、はっきり言ってお守り役。他のドクター達同様、忌憚なく船長に物を言うのはご存知の通り。タンカを切らせたら右に出るものは居ない姉御肌の御人。しかし、第5話において謎の支配者"ボーズ"のスポークスウーマンと化してしまった彼女を救うため、ピカークは司令部の制止をフリきり、意を決しハーレムをジャック、惑星シャカリでのスッタモンダの末、無事ホロドクターにコピーされていた元の人格を復元することに成功する もっとも、第5話はあまりもアブナイ内容なので、決して公にされることはない- 本話冒頭を参照のこと

 機関長; ドクター同様ピカークとは旧知。今や宇宙艦隊屈指の機関チーフとなり、連邦代表大使を歴任するなど、連邦議会とのパイプも強い。この方だけが唯一ダンナ選びを間違えなかった- さすが! そして勿論、機関長チームには昔と変わらずお世話になっている恩、決して忘れてはございませぬ

 アトム; 陽電子脳の権威、秋葉原博士によって作られたアトム型アンドロイド。一応性別は女性。基本的にはボケキャラだが、ピカークと違うのはそのバイタリティ- 超人的能力でコンピューターをソツなくこなす。ちなみに、クエスターと言う兄貴がいたのだが・・・・



 操舵長; クルーの中では最も控えめで、オブライエンの嫁さんと同郷と思っていた所、そうではない事がのちに判明する。コンピューター・ソフトを買う度に入っていたチラシが元で、ピカークはスカウトしたらしい。なお、保安主任と共に特殊潜入隊にいたことがあり、ドクター不在の折は作動不良のホロドクターに代わり、簡単な医療オブザーバーも担った。

 2代目カウンセラー; 前任者の寿退隊を受けて、第3話よりの登場。決して前任者に未練があって名前が似ていたからではなく、どうやらそのピュアさに感じ入ったピカークが任命したらしい。生粋の地球人でESP- なお第5話では転送室にて、ドクター救出チームの手助けをしてくださいました

 U.S.S.ブラック・保安主任; ピカークの人生をめちゃくちゃにしたヨコハマの女に、美脚というところまで瓜二つ(爆)! とにかく会った途端に自分を戒める為にも彼女を傍らにおきたいと熱望する(←ヤバイ)

 U.S.S.ブラック・機関長; ボタンをひとつひとつゆっくりと真面目に押す姿を見てこの娘しかいない! と、ピカーク惚れ込む。ドクターマッコイがドクタークインと出会うという暖めていた企画をパクられてうじっていたピカークのハライセでもある(笑) ただ、実際に会ったときは実におしゃべりな娘さんだった・・・・裏表がないとよいのだが。。

 2代目ハーレム艦長(元転送主任); 当初ピカークがスカウトした頃は若干目立つ程度の士官だったが、あっという間に保安主任、そして一気にピカークの後任艦長に就任。しかし休日誰もいないブリッジでたまたま3代目カウンセラーにレクチャーしていたところピカーク始めドクター救出チームと遭遇、三代目カウンセラーと共に人質に! また惑星シャカリでは"ボーズ"によりサイアクのダンナをあてがわれてしまう・・・・くわばらくわばら!

 3代目カウンセラー; いよいよ第5話より本格登場! あの艦隊アカデミー卒業試験と同じ名前を持ち、ピカークの修士論文と同じ内容の学士論文でアカデミーを卒業した超注目クルー! ピカークから逃げまくっていたゆえに、彼がいなくなったハーレムにほっと着任したとたん、皮肉にもそのハーレムがジャックされるハメに! 所属が初代カウンセラーと同じと言う(二人が一緒に写ったホログラムは今も家宝!)、一体ここまで全部ほんとに偶然なのかよぉ! と言う鴨がネギしょった様なキャラ! とととっころが! あ゛~ッ!(もう言えない!)
第6話 「故郷へのタルイ道」
第1章


恒星日誌:宇宙暦何だったっけ・・・・もう年食うとわかんなくなっちまって

     ドクター救出作戦一応の成功の元、我々は拿捕したフィレンギ艇で
     惑星ヴァルカンより地球での裁判のため旅立つことになった。
     艦はホロドクターの提案で 『負け犬』 と名付けられた。
     そのホロドクターもドクターのカトラを戻し終えた後は、
     その役目を終えたがごとく、致命的な故障で息絶えた。
     アトムいわく、地球へ戻らないと再生は不可能と言う。
     ハーレムの新艦長は、ボーズの一件でオトコが絶えなくなったらしく
     さっさと民間艇で地球に帰ってしまった。
     もっとも彼女は我々の人質であって被告ではないので、拘束の理由もないが。
     いつか来るとは感じていたが、とうとう犯罪者の汚名を着せられての帰国となる。
     ドクターはまだ記憶障害が残り、大尉の犠牲、
     なによりもU.S.S.ハーレムそのもの-
     払った代償は終わってみれば計りしれない


 ヴァルカンの風は暑く、カラカラに乾いていた。まるで今のピカークの心情そのものだ- 言われのない怒りと乾いたハート・・・・ここまで連邦にそして社会に冷徹な仕打ちを受けるとは思っても見なかった。ドクターは戻っても、哀しみには変わらない。 「負け犬」 の脇を通れば、ヴァルカンの有志達がありがたいことに整備を手伝ってくれている。お蔭で、このフィレンギのボロ艇はなんとか使い物になる形にまで復旧できそうだ。しかしまぁ、ほんとに 「負け犬」 だよな、こりゃあ
 「どうしたの、ジャム? 相変わらず元気ないのね」 ああ、機関長か・・・・変わらず頼りになるのは、もう彼女しかいないか 「顔に 『裁判なんてごめんこうむる』 って、書いてあるわよ。」
「ドクターの件は元はと言えば私ひとりのわがままだ- 君達までもが召喚されるのは、本意ではないね。」 そこで思わず顔に出た笑みは、一体何笑いと言うのだろうか- ああきっと、 "あざ笑い" だ
「とにかく-」 ふぁーっと機関長も深呼吸したが、ピカークとは比べ物にならないくらい明るい 「くよくよしたって、始まらないじゃん! 無事地球に帰れるだけ、よしとしなくちゃ!」
 ふと、見上げた断崖に人影が見える -あれはドクターだ- 間違いはない
機関長がささやく・・・・「こんな時、昔の彼女だったら 『しょげてんじゃねぇ!』 ってやさしく罵倒してくれていたと思うわよ」 徐にピカークの肩を叩いて去ってゆく- 君も、そうしてくれてるじゃん・・・・
 また、大尉のことを思い出し、ブラックになった。どうなにを見ようとも、マイナスがゼロに戻ったに過ぎないのだ。だが本当に、人助けで裁判とは、我が人生なんともなさけなや。
 そしてドクターは、果たして元に戻ってもらえるものなのだろうか・・・・


 自分が自分であり、自分が自分でないような感覚は、誰しもが持つものだが、ことドクターに関してのそれは重篤だった。しかし決して体調それ自体が悪いのではなく、なにかこう、あまりに寝過ごして起きたあとのようだ- しかも、数年ほど。そして眼下の人々が自分の旧友と解ってはいたが、それはまだ話に聞いたそれの様で、なにか実感が伴って来ない。だがあの 「ジャム」 と言う男には不思議な感情が残っていたことを知っている- その正体は、自分にもわからないが。そんな疑問を探すためか、彼女は再び再教育の為、学習用マシンのある屋内へと戻った。彼女は日差しをさけるためのフードを脱ぎ、マシンを起動させる。
 マシンは問う 『大腿二頭筋の支配神経はこの範囲ではどれ』 人体のグラフィックが踊る
 ドクターは答える 「脛骨神経」
 マシンは答える 『正解』 続けて 『オリオン人のトウールス菅にみられる一般的な挫閉症状は』
 ドクターは答える 「ベラホキマ症候群」
 マシンは答える 『正解』 続けて 『アドレナリンの主な宇宙症状との関係をのべよ』
 ドクターは答える 「屁理屈」
 マシンは答える 『正解』 続けて 『コルドラジンの主要成分のうち、変異水性同位体との共変性を可能とするものは何か』
 ドクターは答える 「帰ってきたヨッパライ」
 マシンは答える 『正解』
 そしてしばし余韻ののち 『愛してますか?』
 ドクターは眉間に皺を寄せた 「何ですって?」
 マシンはなおも 『愛してますか?』
 ドクターは怪訝に 「意味がわからないわ・・・・」
 「愛は万物の根源であり、エネルギーの源だ」 後方からの声がドーム状の部屋に木霊する- ドクターはそこに、自らを救った師匠の姿を見た
 「師匠・・・・」 そこには確かに、ひとつの愛の形があるのかも知れない
 「ピカーク提督とその仲間達は一種 "愛" を以ってお前を救った。そして唯一戻せなかったカ
トラは "愛" だ。"愛" だけは再び経験を通じて取り戻すしかないのだ」 師匠の威厳の姿は博愛と慈悲そのものだった 「それは彼らと再び交わることによって、お前の中に輝きを求むるだろう」
「本当に取り戻せるのでしょうか・・・・まだ何か、教えられたことばかりの様で・・・・」 "自信" も勿論、そこに含まれているのは確かなのだが
「取り戻したいという気持ちそのものが、それを取り戻す鍵となる- お前の心は決して弱くはない」 そう語る師匠の想いこそ、誰よりも堅く、そして激しい。
 「それに・・・・なぜか・・・・」 ドクターはもどかしげでもある 「あのピカークと言う人への感覚だけ、自分の中でひときわ違っている気がするのです」
 師匠は決して笑みを見せてはいなかったが、そこには微笑みがアルカイックっていた 「それこそこれから、取り戻すがいい」


 さて、全員集合とは正にこのこと、不本意ながらお尋ね者クルー達は、いよいよ完了した 「負け犬」 の船体の前に一列に並んだ。相変わらず実に趣味の悪いピンクの私服に身を包んだピカークは、偉くもないのに偉そうにクルーの前で空元気を見せる
「機関長!」 相変わらず美しい眉をレイズして 「はいな!」
「操舵長!」 真面目な目を真摯に向けて 「はい」
「アトム!」 相変わらず少年のようだ 「は~い!」 そして首を捜して 「あれ、ドクターは来ないんですか?」
「さっきドクターの師匠に挨拶がてら伺ったが、やはり本調子ではないので、同行は微妙だと言われた。説得は約束頂いたのだけれども、ね。体調の問題ではないらしいけど」 気を取り直し 「極めて人員不足だが、われわれ元ハーレム・クルーは、軍法会議召喚のため、これより地球に帰還する- 出航準備を整えまひょ!」
「アイ、サー!」 結構みんな、お付き合いでそう叫んでくれる -散会して、いよいよ出発- 部署点検だ!
 ピカークは残るメンバーに向き直った- 先ずは、ホシだ。彼女には礼の言葉もない。大尉が死んで、ピカークが我を忘れなかったのは何より、彼女の支えがあったからこそ、なのだから。
 「ホシ・・・・なんとお礼を言っていいんだか、まるっきしわからない- とにかく、ありがとうの言葉しかない。」
 「いいのよ、ピカークさん」 ホシはいつもの明るい笑顔で答えてくれた 「あたしもよく話をきいてあげられなくてごめんなさい」
 ああ、なんてありがたいお言葉! 「そう言ってもらえると、なんとも・・・・」 そこでピカークおもむろに 「実はプレゼントが二つあるんだ-」 そして抱えていた風呂敷包みを開け、「はい、NX-01の
プラモ!」
 それはホシのために、ピカークが1年がかりで建造したものだ。無論、大尉のことなど計算外の頃から 「もし場所を取るようだったら、アーチャー提督にでも譲ってくらはい」
「いえいえ、ありがたく受け取っておきます!」 ああ、喜んでもらえてこんなに嬉しいことはない!
ズに乗ったピカークはさらに箱から何やら取り出す 「こいつは特注のフェイザーライフルで、自動照準でボーグの脳髄を一発で仕留めちまう。100方向にまで発射可能で、これなら奴等何匹射ても不自由することはない」 そう言って得意げに二丁のライフルを、天にかかげた
 やや困った笑みでホシは 「わかった・・・・今度使わせてもらうわね」
「よろしく- 本当にありがとう」 ピカークはホシに丁寧に挨拶をしめると、次は2代目カウンセラーの所へ 「カウンセラー、君がロッカーに閉じ込めた少尉は、事情を知って 『そんな事実はない!』 と言い張っているそうだ。よって君の起訴はなくなった。ドクターの師匠も口ぞえしてくれたみたいだし。」
 「ええ、ありがとうございます」 ハーレムに来たころ、まだ二十歳そこそこだった彼女も、もういい大人だ 「ここの皆さんと、別便で帰ります。別の艦で仕事があるので、本当にごめんなさい。」
ピカークは "負け犬" を振り返る 「あれはこわれそうだから、スポーツ選手団よろしく、別便の方がいい- 現に艦長はさっさと帰っちまったしな。」
 「それから・・・・提督付きのカウンセラーになれなくてごめんなさい・・・・」 臆して困り果てた顔を、彼女は全く隠せなかった 「いかんせん、あのボーズをして提督の "悩み" に感応して倒されてしまったんですもの・・・・それほど症状は深刻で、とてもあたしじゃ治せない- かと言って・・・・」 2代目カウンセラーは本来3代目カウンセラーのいるべき場所に目をやった- しかしそこには黒づくめのボディガードらしき男達がわんさかと "近寄るな:昔のことは喋るな" と書いたプラカードを掲げていて、居るはずの3代目カウンセラーの姿は全く見えない 「3代目さんは、あのとおり面会謝絶だし。」
 それを見てピカークも嘆息 「俺も20年物のロミュランエール、アフリカまで掘りにいきゃよかった・・・・」
 「と言う訳で」 飼い主がウサギに似てもなんだが、2代目カウンセラーはぴょん、と 「もう、手のほどこしようがないんだから、提督も次の囚人船ではカウンセラーなしを覚悟してください」 でも丁寧にコウベをたれて 「ほんとうにごめんなさい!」
 いやいや、謝って断ってもらうのはありがたい。およそが罵倒づくめで終わるのが世の常だったから 「いいんだカウンセラー・・・・達者でご活躍を」
 ピカークは2代目カウンセラーを簡単に(くれぐれも簡単に)ハグすると、3代目カウンセラーのいるであろう場所を固める黒ずくめのリバタリアンどもにアッカンベーした- 非商業主義のポテンシャルたらんと彼女に肩入れしたつもりが、いつしかその権現とは、嫌がらせ以外のなにものでもない。そんな負け犬たらんと "負け犬" の後部タラップから艇へと分け入ろうとした- だが、な
にやら呼び止める声に脚を止める
「ぴかーくさ~ん!」 振り返ると、ヴァルカン大使館の職員である友人がレディ連れでこちらに向かってきた -旧知の彼はヴァルカン滞在中、本当によくしてくれた- 食欲・体力・人付き合いのよさ、どれをとってもピカークはかなわぬ、敬服すべき友だ 「おつり、忘れてるよ!」
大使館ではピカーク達の 「後援会」 を結成してくれて、軍法会議での弁護支援も約束してくれた。どうやらその時の飲み会費のことらしい- ピカークはそんな彼らのやさしさが、たまらなく嬉しかった
「わざわざありがとう・・・・あとでもよかったのに。」 ピカーク、礼を一言
「いえいえ、ただでさえスカンピーでしょうから、さしょうだけど、餞別がわりに」 彼はいまどき珍しい黒ぶちのメガネをズリかけ直し 「しかし、とうとうピカークさんもオンナ運の悪さの極地でお尋ね者になっちゃったネ。」
「そうね、お互い、おーねーちゃんには気をつけようね」 って言いながら、あれ? 「こちらの娘さんは?」
会っていきなりその娘さんは 「こんにちは! "こーせー日誌" のピカークさんですよね? 一緒にシャメ撮っていいれすか?」
 当惑気味にピカーク、その娘とありきたりのピースなツーショットでシャメに収まる
「やったぁ! ええっとコメ書かなきゃ・・・・『こいつが宇宙一オンナ運のない紳士的ストーカーのピカーク』 っと。ありがとうね!」
 ながーい目で見てピカーク 「誰、こいつ?」
大使館員はあわてて 「あ、彼女、僕のガールフレンドです。ピカークさんが 『自分の "こーせー日誌" が元祖ブログだ!』 ってわめいて先代ブログの女王を呪い潰したって聞いたら、ピカークさんに挨拶しとくって言ったんで、連れてきたんです。」
「こにゃにゃちわんこ! あたしのブログに "こーせー日誌" へのリンク、1/1000000ミクロンの文字で貼ってやりますネ!」
「ありがとう、まだ挨拶にきてくれるだけありがたいよ。これが "情報発信権" の確立されてなかった21世紀初頭だったら、リンクどころか存在さえ、無視されたろうからネ。」 と、ピカーク
「またもう、ぴかーくさん、そうやってヒガムんだからぁ!」 と大使館員 「じゃ、挨拶も済んだから、ぼつぼつ僕たちかえります」 ラブラブのガールフレンドに向き直り、「次どこいく?」
そのピグモン顔のモリガールは 「うん、ヴァルカンイグアナの蒲焼がたべちいな♪」
「じゃ、そうしよう!」 ルンルンの大使館員は突如真顔でピカークに向き直り 「それじゃ、ピカークさん、"フォースがともにあらんことを"」
ピカークは返礼でオーソドックスに 「"長生きして、元気でくらせよ"」
「じゃいこっかぁ!」 まるでペーパー夫妻のように、二人はその場から手をつないでスキップしてさってった。
ピカークはそんな幸せそうなふたりを眩しく見つめながら、友の夫婦にいつも祈るように、自分の分まで幸せになるように、と祈らずにはいられなかった(いや、マジ、ほんとに)。
 さて、お約束はここまで。気を取り直してピカークは再びタラップに臨む。そのフィレンギ艇の一歩踏み入れた時の空気は、それはもう、なんかカビの生えた掃除してない部屋のような匂いだ- あ、それって俺の部屋だ!
 一番最初に、後部貨物室兼機関室でブーたれる機関長とでくわす 「見てよジャム! 盗品のガラクタばっかり! こんな盗品だらけなのは、大英博物館とここくらいなものだわ!」
「少なくとも大英博物館なら、入場料は取れたからね」 ニヤリ、と 「エンジンの具合はどうだい?」
「そうね、観光用の海賊船よりちょっとはマシ、って言うくらい。ただ、ダイリチュウムは無駄に食いそうなんで、余分に積んでもらった。」
「あ、そうだ」 ピカーク思い付く 「フィレンギ艇は警戒されやすい。地球まではやや倫理的に問題あるが、遮蔽装置を使おう。」
「そうね、それがいいかも。ダイリチュウムは十分だと思う。問題はどっかで強奪されたエンジンしだいね。これも戻ったらどこで盗まれたかひと悶着ありそうよ。いかんせん "ペガサス型" だもん。」
「ロミュランとの条約もすっかり形骸化だな。」 とりあえず機関長なら間違いないだろう 「ブリッジには、こないの?」
機関長、やり場なく 「そう、残念ながら機関制御、繋げる余裕なし! 操舵システムが紐で操作しないだけ、感謝しなきゃ」 壊れそうなイスにドカッと 「ゆえに、ここでひとりさびしく釜番!」
楽しそうにピカークは 「それじゃ、たのんまっせ。」 と最敬礼、続いてホラ穴のようなレドーム屋根をくぐると、いくつかのアスベストたっぷりそうな崩れそうな壁を抜け、やっとブリッジのドアにまで辿りついた。残念ながらこのフィレンギ艇は全て階段だけだ- 健康にはよさそうだが。
 ブリッジのドアは引き戸になっていて、よっこらさっとドアを引き倒すと、そこは連邦艦仕様に改装されたとってつけたようなブリッジが現れた。14畳くらいだがさすがに畳間があるようなフザケタくだらないインテリアこそないものの、学園祭の飾りつけのようなコンソールが並ぶ。これじゃ、クリスマスイルミネーションだ- なんともはや、ムカつく季節を彷彿とさせるとこがまたムカつく。前方の操舵席には操舵長が、航宙席にはアトムがいつものように陣どっている- あれ、あとのメンツは? ああそうか、いないんだ・・・・サビシイッ!
 「操舵装置・慣性制御システム異常なし・スラスターパワー80%スタビライズ・インパルスシステムok・ワープシュミレートok・・・・」 操舵長はタメイキ 「ま、異常がないのは、あくまでもこのシステムのキャパ内でって注釈付だけど。」
ピカークは操舵長の猫のようにしなやかな懐かしいタッピングを嬉しそうに眺めていた 「で、アトムの方は?」
絶対に年をとることも太ることも知らない彼女ははっきりと 「航行してみないとはっきりしたことは
わかりませんが、ナビゲーションはひととおり異常なさそうです。なお、科学コンソール機能もここで制御します。やや煩雑ですけど。」
「よろしい、みんなよくやった!」 おおげさに誉めてみせるピカーク。空元気が見え見栄だ。
 その時、突然ブリッジの引き戸が開いた- そこには白衣に聴診器という昔の女医の格好をしたドクターが、毅然としかしながらどこか不自然に立っていた 「ピカーク提督、乗艦を許可願います」
若干の間ののち、ピカークは言い放つ 「乗艦を許可する」 いぶかしげに 「ジャム、ジャムだよドクター! 忘れたのか、クラゲの飼い方教えたろうが!」
「お名前、ピカーク提督で間違いじゃないんですよね?」 実に冷たい答えがそこにあった- 明らかに、まだ本調子ではない
「よし、わかった」 ピカーク、とりあえず矛を収める 「医療室が要を成すまで、通信席を預かってほしい- なんとかなるかな?」
「ええ、ひととおりは・・・・やってみます。」 優美に席についたものの、おとなしいドクターなんて、実につまらん
 彼の気持ちをおもんぱかってか、操舵長が苦笑いした。
「さて、と・・・・」 ドクターが着座するのを見届けて、カンネンしたピカークは、指令席に見立てたぼろぼろのとってつけた事務用イスにドカっとふんばると 「故郷へ帰りまひょ!」
フィレンギ艇はぐだだだだっと唸る様な音と共に、やっとこさヴァルカンの赤い土を踏み立てた- 甲虫艦とは、よく言ったものだ。
ただ赤い太陽だけが、彼らの前途にそれなりの気配りの栄誉を照らしているかに見えた
 一体、希望はそこにあるのだろうか


 出発して十数分も経っただろうか- ワープと遮蔽装置が順調に機能しているなんて、夢みたいな話だ。艇内の空気はなぜかどんよりと、ヴァルカンの乾いた空気とは違うものに化けていた。なーんか居るだけで守銭奴になっちまう気がする。ところでフィレンギ商人とオオサカ商人て、同じ人種だったっけ?
 なんとか通信装置と格闘しているドクターの所に、釜番に一区切りつけた機関長がやってきた。いかんせん、カトラを戻してからお初の会話である。なんとなく照れくさく、はにかみはばかれるものがあった。
「こんにちは!」 機関長は陽気に 「みんなのご挨拶はどーお?」
イヤーシーバーをかしげてドクターは 「ご挨拶はって?」
「いえ、その・・・・今日のウェイクアップコールは、何の曲かってこと!」
「それって、かなり昔の話よね・・・・待ってね・・・・今亜空間通信がなぜか錯綜しているから・・・・」
 全くつれないドクター
機関長は痺れを切らし 「もう、わたしよ! 機関長よ! もっとフランクにしましょうよ!」
「ごめんなさい・・・・」 ドクターはブルーだ 「あなたのことは覚えているんだけど、どうかかわっていたかがよく思い出せなくて・・・・」
すまなそうに機関長は 「ごめんなさい- いいの、本調子にそのうちなるわよ- ファイト!」
ふたりの様子をやさしく見つめていたピカークに気付いて機関長、「なに、あたしの顔に何かついてる?」
「いやなに、そのフレーズ、余りにも古臭いかと。」 と、普段彼が言われるせりふをぼそっと
「フン!」 機関長はご機嫌を損ね、重そうな引き戸と共に釜番に戻った
「あたしが悪かったのかしら・・・・」 気弱にドクター
「いいや、俺だ」 自信たっぷりに胸を叩いてピカーク
「提督!」 突如アトムからだった 「どうも時空連続体に著しいゆがみが生じている模様です。ただでさえ難しい宇宙標準時の測定が、ほぼ不可能になって来ました」 と言いながら、アトムはグラフとニラメッコ状態だ。
ピカークもディスプレイに赴く 「うん、こりゃまずい・・・・等方性が喪失している。あー、添え字に虚数値まで出てる・・・・やばいぞ・・・・しかし、この遮蔽装置はディメンション・スタビライザーで局所次元を摂動させているから、この現象の影響はうけないってことか?」 アトムに返す
アトム、自信ありげに 「はい、そう言うことになります ただ、遮蔽装置を切らないと、この現象が通常空間にどんな影響を及ぼしているかは正確に計測することはできません」
うーん、ピカークは唸った 「かく言う、切る訳にいかんしな・・・・」
「提督! 見てください! ヴァルカン星が消滅します!」 操舵長が思わず叫ぶ!
スクリーンにはまるでドーナツの様に歪んだヴァルカン星が、空間に飲み込まれるように消え行く姿が映った- ああ、なんてこった!
 「提督」 おずおずと遠慮勝ちにドクターが 「惑星連邦大統領からセキュリティ緊急チャンネルで通信です-」 付け加えて 「非常に微弱です」
すぐさまピカーク 「スクリーンに!」
そこには空間の歪かはたまた通信自体の歪みなのか、人相を判別できないほどの大統領の立体映像が現れた 「この通信は特に連邦艦隊旗艦プロトコルに送信する・・・・重要極秘通信なのでネットに流出させることを禁じる・・・・地球のマントル内の遮蔽空間に安置されていたロッテンベリー卿の棺が何者かに盗まれ、時空間に収集のつかない歪みが生じた・・・・現にサンフランシスコでは複数の世紀の連邦艦隊が入れ混じる現象が生じ、26世紀の時間・・・・局からも・・・・通報があった・・・・この宇宙は現在、確実に崩壊を遂げようとしている・・・・唯一の・・・・次元跳躍装置・・・・実験艦ブラック・・・・次元位置データ・・・・追跡せよ・・・・エネルギーをセーブし・・・・幸運を祈る・・・・」
 映像は復元不能なレベルに達し、プツリと途絶えた
 しばし、ブリッジには只でさえ重苦しい空気が、更に磨きがかかった状態となる
 はあ・・・・なんでこう、悪いことばかり重なるんだろ・・・・ネガティブになるなと世間は言うが、これじゃ、ならねぇようにするのはムリってもんだ・・・・なんとか、気を取り直さなきゃ・・・・
「どうしたもんかなぁ・・・・ドクター、済まんが今の映像、音声だけでももっと復元できんかな?」
ドクターは不穏当に 「通信、取り次ぐぐらいはできますが・・・・」
ビカーク、察して 「了解、アトム、通信機能をそちらのコンソールでオーバーライド。解析頼む。」
「了解」 アトム、眉間に皺で 「全てのプロトコル情報は再生されていますが、唯一付加情報
データがあります。」
「出してくれ」
 スクリーンには、なにやらシャープな黒光する美しい流線型の艦の映像が映し出された -これじゃ、宇宙空間じゃ見えっこない- だいたいこんな艦を作ったら 『絵にならない!』 とお偉方からクレームが来るこったろう! だが船体には間違いなく 『NX-0000 U.S.S.BLACK』 の白抜き文字がはっきりと見える。
「なんだアトム、この実験艦は?」
「侍ってください・・・・現在データ解析中です・・・・これは "ペガサス型遮蔽装置" と "次元跳躍装置" を搭載した実験艦ですね。極秘扱いになっていますが、臨時事態に限定公開を余技なくされたのでしょう。しかし、この艦がこの事件にどう絡んでいるのかは、先ほどの通信から読み取ることは難しいです- ただ・・・・」
ピカークとアトムはめくぱせする・・・・そのアトムの無表情中の無表情で思い出した・・・・およそ、棺が安置されていた遮蔽空間とは、あそこだ! (わからない人は、第三話を読んでネ)
「ロッテンベリー卿の棺って、確か第三次世界大戦中に行方不明になってますよね?」 と、操舵長。
「ああ、そうだったかな」 ピカーク、アトムを覗きながらお茶をにごす- ここで吐露してよいかは極めて難しい判断だが、現時点ではあえて控えることにした 「すっかり忘れてた」
 アトムは、なにもなかったかの様だ 「提督、とにかく地球近辺まで戻って、現状を観察する必要があると思います。ただ時空間のズレが生じていて、現在がいつどこなのか、正確な特定も難しくなって来ています。既に空間単位で10パーセク、時間単位で数十年の差異が不確定となっています。宇宙暦はもともとそうであった事を除いても、計測は不可能になりつつありますね。」
 なるほど、冒頭のこーせー日誌の言も、まんざら年のせいではなかった訳だ。
 「機関長! 聞こえるか?」 ピカーク、壁にくっついた通信管に向かい、思いっきり叫ぶ 「エンジンの具合はどうだ? 空間異常に耐えられるか!?」
 「提督ッッ!!」 その時、操舵長の叫びがブリッジにこだました- スクリーンにどう見ても数百年は前の豪華客船があたかも襲い掛かって来るかのように突如出現したのだ! 完璧衝突コース
だったが、新型遮蔽装置のお蔭で、先方の船体を不気味にすり抜け、こちらは言われて見れば当然無傷だ。
 「ふう・・・・俺たちゃ氷山か!」 ピカークひとこと、ひとりツッコミ。
だかそれもまんざらジョークではなく、その古びた客船の姿を追ったスクリーンは、それが爆発し果てる様子を映し出した。無論こちらの影響ではないが、決して目覚めがよいものではない。
「どれだけの人が亡くなったんでしょうね・・・・そしてどれだけの子孫が生まれなくなったんでしょうね・・・・」 操舵長が嘆息する
 「ジャム、聞こえてる?」 いけね、機関長、忘れてた 「今のはすごかりたけど、航行に支障はないわ。地球システムにはあと2時間くらいで到暑の予定・・・・ただ、時空間のズレの具合がこのままで、って話だけど。問題はディメンション・スタビライザーが熱を帯びていて、位相補正に困難きたしているみたい。ダイリチゥムも既にひとつ交換したわ。」
「たらふく積んどいてよかったな・・・・」 ピカークはムリに安堵した 「よし、このまま太陽系に向かってみよう!」 そこで適当な言葉を一瞬捜す 「"適正"ワーブでまいりましょう」
果たして、彼らの前途には何が待ち受けているのか- そして、宇宙の運命と、なにより実験艦ブラックとロッテンペリー卿の棺との関係はいかに!?



スタートレック・ハーレム 第6話第2章に続く